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フォレックス・ディーラー物語 |
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Forex Dealer Stories |
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ブラック・マンデー |
Black Monday |
No.1 |
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1987年
田辺課長と俺は、関口支店長に呼ばれた。
支店長の『特別室』にすぐに来いとのことだ。
『特別室』に向かうために、ディーリング・ルームのガラスの扉を開けた。
バック・オフィスを通り抜けて、廊下へ出る。細長い廊下を歩いてエレベーターに向かう。
ボタンを押して、上に向かうエレベーターを呼んだ。
俺たちのディーリング・ルームは24階なのだが、『特別室』はこのビルの最上階、
47階にあるのだ。
俺たち日本人は関口支店長のこの『特別室』を『ビップ・ルーム』と呼んでいる。
『ビップ・ルーム』は最上階にあるから、こちらで言う、いわゆる、「ペント・ハウス」だ。
『ビップ・ルーム』は窓が大きくて、外の景色が素晴らしく見渡せる。
ニューヨークの摩天楼は、遠くから眺めたり、写真で見たりすると、日本のビルのようにくっ付いて建てられているように見えるが、実際には大きなブロックごとに建造されているから、一つ一つはかなり離れている。
ニューヨークの高層ビルの中から外を見ると、隣のビルと距離があることがすぐにわかる。
低い階から窓の外を見ても、隣のビルの壁や窓が見えるだけだけれど、高層階からの眺めは素晴らしい。
『ビップ・ルーム』からの眺めだと、北側にはセントラル・パークが見下ろせるし、西側にはワシントン・ブリッジとその橋の向こうに建てられたニュー・ジャージー州の高層ビル集団が見える。
廊下を出て反対側に回ってマンハッタン側を眺めれば、有名なエンパイア・ステート・ビルや美しいクライスラー・ビル、近代的なシティコープ・ビルの上層部が自分の目の高さに見える。
天気がいい日に『ビップ・ルーム』から外を眺めるのは楽しみだ。
普段、関口支店長はこの『ビップ・ルーム』をお客様の応接室として使っている。
たまにアフター・ファイブに支店のマネージャーを集めてプライベート・パーティをすることがあるのだが、ビールを飲みながら眺める夜景も悪くない。
『ビップ・ルーム』に入ると、関口支店長と篠原副支店長が田辺課長と俺を待っていた。
「さあ、こっちに来たまえ。いつもご苦労様。
ディーラーはなかなか席を離れられないから、いつもなら、私がディーリング・ルームへ行ってミーティングをするようにしているんだが、たまには景色を眺めながらのミーティングも良いかなと思って。
今日のマーケットは静かですよね?」
田辺課長が答えた。
「はい。 今日は静かですねぇ。 だいじょうぶです。」
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