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フォレックス・ディーラー物語 |
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Forex Dealer Stories |
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ブラック・マンデー |
Black Monday |
No.4 |
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田辺課長は説明を続けた。
「『取る』場合は、思惑通りに金利が上昇する場合でも、手前で『実現損』が出ます。
仮に1年のデポを1億ドル『取った』とします。
現在のマーケット・レートは、1年が7パーセントです。
1億ドルの資金を『取る』ということは、この資金が我々の手元に送金されてくるということです。
金利が上昇するといっても、そこにはタイム・ラグがある訳でして、今日『取って』、明日すぐに金利が上がるということではありません。
1億ドルの資金は『借りてきて』余っているお金ですから、運用しなければなりません。
この『借りてきた資金』のコストは7パーセントです。
この資金をオーバー・ナイトで運用すると、オーバー・ナイト金利は、現在6パーセントですから、1パーセントの逆鞘(ぎゃくざや)になります。」
田辺課長がホワイト・ボードに計算式を書いた。
[(6%−7%)×100,000,000 ÷ 360 = −2,777.78
]
「と、まあ、毎日2,777.78ドルの実損が出るわけです。
思惑通り、金利が上昇して、その上がった時に資金を『出す』まで、この『実現損』は続きます。
思惑通り金利が上昇しても、それはいわゆる『含み益』の状態であって、すぐに『実現益』にはならないのです。」
俺は、
『ふむ、ふむ。 なるほど。 田辺課長の説明はわかりやすいな。』
と、熱心に聞いていた。
支店長や副支店長にとっては理屈ではわかっていることなのだが、彼らも、田辺課長の説明に耳を傾けている。
我々三人が真剣に聞いているのが、田辺課長に伝わるのだろう。
田辺課長は照れ屋だから真剣な話の最中にふざけたり、無意識に冗談を交えたりするのだが、今日はけっこう真面目だ。
田辺課長は説明を続けた。
「金利が上昇する場合には、オーバー・ナイト金利も、勿論、上がる訳です。
オーバー・ナイト金利が、ワン・イヤー(1Year、1年)で借りた資金のコストを上回れば、逆鞘は解消されて日々の『実現損』は出なくなります。
このケースで考えるならば、オーバー・ナイト金利が、7パーセントになれば『実現損』が出なくなる訳ですね。」
俺は思わず口をはさんでしまった。
「でも、オーバー・ナイト金利が、そんなに簡単に1パーセントも上昇するとも思えないんですが・・・・・。」
田辺課長が、にっこりして言った。
「梅田が良いことを言いました。
今のマーケットで考えれば、その通りでしょう。
この『取る』戦略のポイントは、いつ『取る』のか、そのタイミングが重要です。」
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