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フォレックス・ディーラー物語 |
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Forex Dealer Stories |
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ブラック・マンデー・エピローグ |
Black Monday Epilogue No.2 |
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だいぶ時間が経ち、飲みすぎて、挨拶もつらい状態になってきた。
酒は弱い方ではないのだが、ずうっと立って飲んでいるのも大変だ。
このパブはアイリッシュ・スタイルだから、座る席が少ない。
俺がふらふらしているのを見て、田辺課長と、エイドリアンが俺に声をかけてくれた。
「カム・ヒア、マット!」
(Come here, Matt!)
片隅に少しだけある、テーブル席に呼んでくれた。
田辺課長と、エイドリアンに挟まれるように座った。
田辺課長が、日本語で話し出した。
「梅田・・・・・。 おまえ、良くがんばったよなぁ・・・・・。」
「お世話になりました。 本当にありがとうございます。
サンキュー・ベリー・マッチ・エイドリアン。」
二人に、心からお礼を言った。
エイドリアンは努力家で、日本語の学校へ行っているから、この程度の日本語は理解できる。
「面白かったなぁ・・・・・。 いろいろとやったよなぁ・・・・・、梅田も。
ハハハ・・・・・。」
田辺さんは、俺がホテルでチェック・インすらできずにニューヨークに来た事や、俺の起こしたかずかずの失敗を思い出していたのだろう。
「いやぁ・・・・・。 田辺さんは、マーケットでも有名だったじゃないですか。
こっちに来る前から、いろんな人から田辺さんのエピソードを聞いていたんですよ。
ご本人にお会いしてみても、『変な人だなぁ』って、ずーっと思っていました・・・・・。」
「ハハハハ・・・・・。」
「だけど、『ブラック・マンデー』のとき、田辺さんがワン・イヤー・デポを『出した』じゃないですか。 ナイン・アンド・ハーフを・・・・・。
『梅田な、ブローカーさんの電話のボタンを押して【ユアーズ】って言えばいいんだよ。』って、そう言いましたよね。
【俺だって、そんなことぐらい知ってるよ!】
そう思ったものですから、「俺には出来ません!」って怒って答えました。
そうしたら、
『なんだ。 おまえ、出来ないの? じゃあ、俺がやってやるよ。』
そう言って、田辺さんが2000本くらい『出した』んですよ。」
「ああ。 そんなこともあったなぁ・・・・・。」
「当時、僕は、もうビビッちゃって、手が出ない状態でしたから・・・・・。
結局、田辺さんの『出した』ポジションがテン・ミリオン・ダラーの勝ちになったけど、俺が『出した』ポジションはほとんどチャラでしたよね・・・・・。
トータルで考えれば・・・・・。
田辺さんって本当にすごい人なんだって、あの時、気が付きました。」
「ああ・・・・・。 あれか・・・・・。
そういえば、そんなことあったなぁ・・・・・。
梅田・・・・・。 あの時、おまえ、責任を取って辞めるつもりだっただろう?」
「うーん・・・・・。 そうかも知れません・・・・・。
まあ、そうなったら、それもしょうがないなぁ、とは思っていましたけど・・・・・。
だって、普通は『逃げる』じゃないですか。
『あいつが、やりました』って・・・・・。
田辺さんの同級生の中嶋さんが、そう言っていましたよ。」
「なーに、生意気言ってんだよぉ・・・・・。 小僧が・・・・・。
俺は課長だぞ。 おまえみたいなペーペーの平社員、辞めさせる訳にはいかないじゃないか・・・・・。
あれかぁ・・・・・。
あれなぁ、失敗したら、俺が辞めるつもりだったんだよ。」
「・・・・・? ・・・・・?」
俺は田辺課長の言っていることが、すぐに理解できなかった。
「あれかぁ・・・・・。 梅田、よくがんばったよなぁ・・・・・。
よく負けなかった・・・・・。 よかったよなぁ・・・・・。」
「・・・・・。」
田辺課長の言葉を反芻して、ようやく、田辺さんの言っていることが氷解した。
俺は何も言えずに、目に涙が溜まってきてしまった。
エイドリアンが、俺たちの会話を理解できずに、不思議そうに俺を見ている。
不覚にも涙がぽろぽろとこぼれてしまった。
エイドリアンは、俺がニューヨークを離れることを悲しんでいるのだと、勘違いして、
“We miss you, too. Matt....”
そう言ってくれた。
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ブラック・マンデー エピローグ
《了》
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Exchange Trading Tokyo London New York Technical
Terms |
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