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フォレックス・ディーラー物語 |
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Forex Dealer Stories |
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ディーリング・ルームに戻ると八時四十五分だ。
指標の発表までまだ四十五分ある。
女性陣は帰ったんだろうなと思っていたら、ディーリング・ルームの隅のソファに集まっている。
「あれ? みんな戻ってきたんだぁ。」
「ええ、そうよぉ。」
「指標の発表って九時半でしょう?
たまには、みんなで見学させてもらおうって・・・・・」
「まだ時間があるから、頂き物のお酒を出すわね。」
「ああ・・・・。 いいねぇ。 出せ出せ。」
「期末に、ブローカーさんから頂いたお酒がいっぱいあったわよねぇ・・・・・」
どこに仕舞ってあったのか、一升瓶の日本酒や、ワイン、瓶の中に洋梨の入ったリキュールや、中国の紹興酒が並べられた。
どれも良い酒だ。 日本酒は吟醸酒だし、ワインも高そうなやつだ。
「開けちゃえ、開けちゃえ。
こんな時にしか、こんな良いお酒飲めないわよ。」
「そおねぇ・・・・・。
さっき『ティオペぺ』で、飲んだワインよりも、ずっと高そうねぇ。」
女性陣も、みんな酔っ払っている。
「みんなぁ、まだ時間あるんでしょぉ!
こっちにお酒あるわよぉ!」
「えー、まだ飲むのぉ・・・・・・?
ウチの女性陣は酒強いなぁ・・・・・・」
そう言いながらも、荒井がやって来た。
「俺にもちょうだい。」
「あれ?
お酒があるの?」
秋山もやって来た。
秋山の後ろから、ぞろぞろと今年の新人の男の子達が付いて来ている。
『へー・・・・。 秋山って、人徳があるのかなぁ?』
俺は、心の中で思った。
秋山は俺よりも5歳か6歳下だったはずだ。
外見はちょっとごつい感じなのだが、女性陣には人気がある。
秋山は、大学時代にプロ・ボクサーになって6回戦までいったそうだ。
俺も昔、大学生の時に、体育の授業でアマチュアのボクシングを習ったことがある。
ボクシングは物凄い運動量だ。
相当の体力がある奴でも、3分間相手を殴り続けることは、到底できない。
テレビでプロ・ボクサーが10ラウンド、あるいはそれ以上戦うのを見ていてびっくりする。
あの体力は超人的なものだ。
アマチュアはせいぜい3〜4ラウンド程度しかやらないはずだが、相当練習している奴でも、普通はフル・ラウンド持たない。
体育会の若手が実技のアシスタントをして、相手をするのだが、スパーリングをしてもなかなか当たらない。
空振りは余計に体力を消耗する。
当たらないながらもパンチを出し続けると、くたびれきったところを狙いすましたようにジャブを打ち込まれる。
最初は軽い気持ちでスパーリングを始めるのだが、一発クリーン・ヒットされると、もう本気だ。
本気になって打ちにいっても、こっちの出すパンチは当たらない。
最後は消耗し尽くして、ただドタバタやっているだけになってしまう。
アマチュア・ボクシングでさえあれだけ大変なスポーツなのだから、プロはもっとすごいに違いない。
前に一緒に飲みに行った時に秋山に聞いたことがある。
「秋山、大学にもボクシング部はあっただろう?
なんでプロ・ボクシングなんだ?」
「梅田さん、どーせ狙うなら、世界チャンピオンですよ。」
「・・・・・。」
「アマチュアでやったって、プロでやったって、殴られれば痛いですから、同じじゃないですか。
どうせ痛い思いをするなら、『金持ち』になるほうがいいかなっと思って・・・・・。」
「そっか・・・・・。
でも、なんでやめちゃったの?
やっぱり、プロは強かったの・・・・・?」
「そりゃプロのパンチはすごいですよ・・・・・。
最後の試合で、顔面にパンチ食らって角膜が剥離したんです。
一度、角膜剥離を起こすともう試合をさせてもらえないんです。
失明の恐れがありますからね。」
「・・・・・。」
「その試合の時に、角膜もやられたけど、鼻の骨を折られちゃって・・・・・。
鼻の骨って、折れると鼻が陥没するんですよ。」
「・・・・・。」
「だから、手術で鼻の骨を持ち上げたんです。
そしたら鼻が高くなって、前の顔と違うんですよ。
男前になりましたね。 前よりも、ハハハ・・・・・。」
「・・・・・。」
俺はこの話を聞いて、秋山とは喧嘩をしないようにしようと思った。
秋山が新人の男の子達に飲めと、酒を勧めている。
秋山は妙に迫力のある奴だから、新人の男の子達も断りきれないようだ。
『人徳で付いて来てるわけじゃないな・・・・・。
みんな、恐いんだな、秋山が・・・・・』
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