ドル円ユーロ投資入門
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外国為替の基本と
カラクリがよ〜くわかる本

外国為替の基本とカラクリがよ〜くわかる本


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フォレックス・ディーラー物語
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Forex Dealer Stories
「小早川」 No.3

 「おい、秋山。
 あんまり無理強いするもんじゃないぞ・・・・・。」

 他の奴じゃ言えないだろうと思って注意した。


 すると、元気の良さそうな、新人の一人が、

 「いや、梅田さん。 大丈夫です。
 僕は体育会系ですから。
 酒は鍛えられてきました。
 みんなを代表して、僕が飲みます。
 イッキやります。」

 「おい、大丈夫か・・・・?」

 秋山がコップにドボドボと紹興酒を注いだ。

 紹興酒というと、普通は『老酒(ラオチュウ)』のことだ。
 『老酒』は色が茶色で強い酒に見えるが、本当はそんなに強くない。

 けれども、ここにある紹興酒は白い瓶に入っている透明の酒で、『茅台酒(マオタイシュ)』と呼ばれるやつだ。
 中国酒の中で最も強い酒だ。
 五〇度か六〇度くらいのアルコール度数だったはずだ。


 「おい、その酒は、ものすごく強いやつだぞ。
 本当に大丈夫かぁ・・・・・?」

 「本人が大丈夫と言ってますから、大丈夫でしょう。
 小早川飲め。」

 いっぱいに『茅台酒(マオタイシュ)』の入ったコップを、秋山がその新人の男の子に手渡した。

 「いきます!」

 ゴクゴクと飲み干した。

 「きゃぁー。」

 「すごいー。」

 パチパチパチっと、女性陣からからかいの嬌声と拍手が起こった。


 「僕は酒強いですから、もう一杯いきます。」

 「そうか。」

 秋山が飲み干したコップにまた『茅台酒(マオタイシュ)』をなみなみと注いだ。

 「じゃあ、いきます。」

 また、ゴクゴクと飲み干した。
 また、拍手と嬌声が上がった。


 ほんの短い間なのに、みんな結構また飲んでいる。
 さっき「ティオペぺ」でも随分飲んだのに・・・・・。



 「もうお酒ないのぉ・・・・・」

 「この洋梨のお酒、おいしかったわよ。
 どうにかして、この瓶の中の洋梨・・・・・。
 食べられないかしら?」

 「この箸で突ついてみようか?」

 「だめねぇ。 突ついてもどうにもならないわ。」

 「瓶、割っちゃおうか?」

 「割っちゃえ、割っちゃえ。」

 ついに瓶を割って、中の洋梨をかじる女の子まで現われた。



 わいわい騒いでいるうちに、発表の時間になってしまった。

 「梅田さーん!
 ディーリング・ボードに着いていて下さい。
 お客さんが、プライス取りに来ますよぉ!
 時間ですよぉ!」

 荒井はもう自分の席に座っている。



 「失業率6・5パーセント!」

 「予想が6・3パーセントですから、予想よりも悪いです!」


 スピーカーからブローカーさんの大声が飛び込んでくる。

 「ニーゴー・ギブン!」

 「ニマル・ギブン!」

 ドルが売られ出した。


 ドル円のレートを伝えてくるブローカーさんの声にも緊張感がある。

 「ギブン!」の声が大きい。


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 「ブローカー」とは、外国為替取引を仲介する業者のことだ。

 ブローカーは、ドルを買いたい人の中で最も高いレート(買値・ビッド, Bid)と、ドルを売りたい人の中から最も低いレート(売値・オファー, Offer)を組み合わせて、プライスを建値(クォート, Quote)する。

 例えば、120円でドルを買いたい人と、130円でドルを売りたい人がいれば、

 「120円ビッド、130円オファー(120円買い、130円売り)」ということになる。

 このビッドオファーの開きをスプレッド(Spread)という。

 もちろん10円も開き(スプレッド)があっては取引が成立しない。

 通常は2〜3銭から10銭程度のスプレッドで建値される。

 「124円25銭ビッド、124円35銭オファー」のようなクォート(Quote, 建値)になるわけだ。

 為替取引は目まぐるしくレートが動くので、少しでも速くプライスディーラーに伝えるために、124円のような大台のレートは省いてしまう。

 この大台のレートをビッグ・フィギュア(Big Figure)と言う。

 25銭とか35銭のような下のレートはピップスとかポイントと呼んでいる。



 ディーラーブローカーもどちらも同じように、ロイター・モニターと呼ぶスクリーンを見ながら取引をしている。

 ロイター・モニターは為替レートの変化を刻々と表示している。

 これを見ていればビッグ・フィギュア(Big Figure)は双方にとって言わなくてもわかっていることだ。


 すると「25銭ビッド、35銭オファー」ということになる。

 これでもまだ長い。

 小さい数字と大きい数字を続けてクォート(建値)すれば、小さい方がビッド(買値)で、大きい方がオファー(売値)に決まっているのだから、「銭」「ビッド」「オファー」も言わない。

 「25、35」で、総て伝えていることになる。

 呼び方としては、「にじゅうご、さんじゅうご」とは言わずに、「ニーゴー、サンゴー」と言う方が一般的だ。

 「ニーゴー、サンゴー(25―35)」と言っているだけなのだが、それはディーラーブローカーにとっては「124円25銭買い、124円35銭売り」の意味になる。



 為替の取引でドルが売られることを「ギブン(Given)」と言う。

 「124円25銭が売られました」とは言わない。

 「ニーゴー、ギブン(25 Given)」と言うだけだ。

 それだけで、124円25銭でドルを買うというディーラーに、誰かがドルを売ったということがわかる。


 反対に、ドルが買われることは「テイクン(Taken)」と言う。

 「サンゴー、テイクン(35 Taken)」と言えば、この場合ならば、124円35銭でドルを売ろうとしているディーラーから、誰かがドルを買ったということだ。


 外国為替ディーラーは、普通はドルをベースにして売買をする。

 ドルの対価が円だと考えればよい。

 ドルも円も「お金」だから、「お金」で「お金」を売り買いしていると考えると混乱する。

 「ドルという物」を売買していると考えるとわかり易い。

 ドルを安く買っておいて、高くなった時にドルを売れば利益になる。

 ドルが高い時に売っておいて、安くなってから買い戻してもプロフィット(利益)だ。

 これが「勝ち」だ。


 逆のことをすれば、当然、損失になる。

 損失は「負け」だ。


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 米国失業率が発表されて、ドルが売られ出した。




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