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フォレックス・ディーラー物語 |
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Forex Dealer Stories |
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「おい、秋山。
あんまり無理強いするもんじゃないぞ・・・・・。」
他の奴じゃ言えないだろうと思って注意した。
すると、元気の良さそうな、新人の一人が、
「いや、梅田さん。 大丈夫です。
僕は体育会系ですから。
酒は鍛えられてきました。
みんなを代表して、僕が飲みます。
イッキやります。」
「おい、大丈夫か・・・・?」
秋山がコップにドボドボと紹興酒を注いだ。
紹興酒というと、普通は『老酒(ラオチュウ)』のことだ。
『老酒』は色が茶色で強い酒に見えるが、本当はそんなに強くない。
けれども、ここにある紹興酒は白い瓶に入っている透明の酒で、『茅台酒(マオタイシュ)』と呼ばれるやつだ。
中国酒の中で最も強い酒だ。
五〇度か六〇度くらいのアルコール度数だったはずだ。
「おい、その酒は、ものすごく強いやつだぞ。
本当に大丈夫かぁ・・・・・?」
「本人が大丈夫と言ってますから、大丈夫でしょう。
小早川飲め。」
いっぱいに『茅台酒(マオタイシュ)』の入ったコップを、秋山がその新人の男の子に手渡した。
「いきます!」
ゴクゴクと飲み干した。
「きゃぁー。」
「すごいー。」
パチパチパチっと、女性陣からからかいの嬌声と拍手が起こった。
「僕は酒強いですから、もう一杯いきます。」
「そうか。」
秋山が飲み干したコップにまた『茅台酒(マオタイシュ)』をなみなみと注いだ。
「じゃあ、いきます。」
また、ゴクゴクと飲み干した。
また、拍手と嬌声が上がった。
ほんの短い間なのに、みんな結構また飲んでいる。
さっき「ティオペぺ」でも随分飲んだのに・・・・・。
「もうお酒ないのぉ・・・・・」
「この洋梨のお酒、おいしかったわよ。
どうにかして、この瓶の中の洋梨・・・・・。
食べられないかしら?」
「この箸で突ついてみようか?」
「だめねぇ。 突ついてもどうにもならないわ。」
「瓶、割っちゃおうか?」
「割っちゃえ、割っちゃえ。」
ついに瓶を割って、中の洋梨をかじる女の子まで現われた。
わいわい騒いでいるうちに、発表の時間になってしまった。
「梅田さーん!
ディーリング・ボードに着いていて下さい。
お客さんが、プライス取りに来ますよぉ!
時間ですよぉ!」
荒井はもう自分の席に座っている。
「失業率6・5パーセント!」
「予想が6・3パーセントですから、予想よりも悪いです!」
スピーカーからブローカーさんの大声が飛び込んでくる。
「ニーゴー・ギブン!」
「ニマル・ギブン!」
ドルが売られ出した。
ドル円のレートを伝えてくるブローカーさんの声にも緊張感がある。
「ギブン!」の声が大きい。
「ブローカー」とは、外国為替取引を仲介する業者のことだ。
ブローカーは、ドルを買いたい人の中で最も高いレート(買値・ビッド, Bid)と、ドルを売りたい人の中から最も低いレート(売値・オファー, Offer)を組み合わせて、プライスを建値(クォート, Quote)する。
例えば、120円でドルを買いたい人と、130円でドルを売りたい人がいれば、
「120円ビッド、130円オファー(120円買い、130円売り)」ということになる。
このビッドとオファーの開きをスプレッド(Spread)という。
もちろん10円も開き(スプレッド)があっては取引が成立しない。
通常は2〜3銭から10銭程度のスプレッドで建値される。
「124円25銭ビッド、124円35銭オファー」のようなクォート(Quote, 建値)になるわけだ。
為替取引は目まぐるしくレートが動くので、少しでも速くプライスをディーラーに伝えるために、124円のような大台のレートは省いてしまう。
この大台のレートをビッグ・フィギュア(Big Figure)と言う。
25銭とか35銭のような下のレートはピップスとかポイントと呼んでいる。
ディーラーもブローカーもどちらも同じように、ロイター・モニターと呼ぶスクリーンを見ながら取引をしている。
ロイター・モニターは為替レートの変化を刻々と表示している。
これを見ていればビッグ・フィギュア(Big Figure)は双方にとって言わなくてもわかっていることだ。
すると「25銭ビッド、35銭オファー」ということになる。
これでもまだ長い。
小さい数字と大きい数字を続けてクォート(建値)すれば、小さい方がビッド(買値)で、大きい方がオファー(売値)に決まっているのだから、「銭」「ビッド」「オファー」も言わない。
「25、35」で、総て伝えていることになる。
呼び方としては、「にじゅうご、さんじゅうご」とは言わずに、「ニーゴー、サンゴー」と言う方が一般的だ。
「ニーゴー、サンゴー(25―35)」と言っているだけなのだが、それはディーラーやブローカーにとっては「124円25銭買い、124円35銭売り」の意味になる。
為替の取引でドルが売られることを「ギブン(Given)」と言う。
「124円25銭が売られました」とは言わない。
「ニーゴー、ギブン(25 Given)」と言うだけだ。
それだけで、124円25銭でドルを買うというディーラーに、誰かがドルを売ったということがわかる。
反対に、ドルが買われることは「テイクン(Taken)」と言う。
「サンゴー、テイクン(35 Taken)」と言えば、この場合ならば、124円35銭でドルを売ろうとしているディーラーから、誰かがドルを買ったということだ。
外国為替ディーラーは、普通はドルをベースにして売買をする。
ドルの対価が円だと考えればよい。
ドルも円も「お金」だから、「お金」で「お金」を売り買いしていると考えると混乱する。
「ドルという物」を売買していると考えるとわかり易い。
ドルを安く買っておいて、高くなった時にドルを売れば利益になる。
ドルが高い時に売っておいて、安くなってから買い戻してもプロフィット(利益)だ。
これが「勝ち」だ。
逆のことをすれば、当然、損失になる。
損失は「負け」だ。
米国失業率が発表されて、ドルが売られ出した。
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