ブラック・マンデー |
Black Monday |
No.15 |
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翌日のマーケットは7.5%が「ビッド」だった。
「オファー」は「7and9/16%」(7.5625%)だ。
昨日のマーケットで、7.5%を300本近く『出している』が、7.5%はまだあと200本『出さなくてはいけない』。
「7and9/16%」(7.5625%)も、500本『出さなくてはならない』のだ。
合計でドル700本は、7億ドルだ。
クレジット・ラインのある相手に限ることだから、そんなに簡単に『出せる』金額ではない。
朝から、まず、7.5%を200本程度『出してしまう』ことにした。
ディーリング・ボードのブローカーのボタンを片っ端から押して、7.5%の「ビッド」をヒットした。
「ワット・イズ・ワン・イヤー?」
(What is 1 year?)
「ハーフ・トゥ・ナイン!」
(Half to Nine!)
「ヨーズ・アト・ハーフ! フー・ペイ?」
(Yours at Half! Who pay?)
「zzzzバンク!」
(zzzzBank!)
「チェッキング・ザ・ライン!」
(Checking the line!)
・・・・・《マニュアルでクレジット・ラインをチェック》・・・・・
「zzzzバンク、シックスティ・ヨーズ!」
(zzzzBank, Sixty Yours!)
「ソーリー、マット。 オンリー・サーティ・ダン!」
(Sorry, Matt. Only Thirty Done!)
相手にも都合がある訳だから、どうのこうの言える筋合いではないのだが、クレジット・ラインに余裕がある相手に限って充分に『出せない』。
俺は、ドルで60本、6000万ドルの『枠』があったので、60本『出す』と言ったのだが、相手は30本しか『取らなかった』。
結局、7.5%を200本 『出す』のに、午前中いっぱいかかった。
昨日との合計で、『出した』金額は500本を10本か20本くらい上回ってしまった。
1/16%上の7and9/16%(7.5625%)でさらにまた500本 『出す』ことを考えれば、10本や20本くらいは誤差のうちだ。
かまうもんか、そう思った。
『もう、ハーフはいいや』、そう思って、ナイン(7and9/16%)をオファーした。
今日は昨日と違って、ナイン(7and9/16%)に食いついてくる。
必死になって、アシスタント・ディーラーのエイドリアンとアン・リーがクレジット・ラインを調べている。
ラインのチェックは彼女たちに任せて、俺は別のことを考えていた。
『なんだ・・・・・、ハーフで余計に出した千万か二千万ドルは、損しちゃったな・・・・・。 この勢いなら、充分にナイン(7and9/16%)で出せたなぁ。』
[ $10,000,000 × (9/16−1/2) % = $6,250
]
[ $20,000,000 × (9/16−1/2) % = $12,500
]
一千万ドルをハーフではなくて、ナイン(7and9/16%)で『出して』いたら6,250ドル、元本が二千万ドルなら、12,250ドル、コストをセーブしたことになる。
要するに、6,250ドルか、12,250ドルくらい俺は損をしたということだ。
考えてみれば、マーケットの実勢レートはワン・イヤー(1Year)は7and9/16%(7.5625%)だ。
ということは、昨日から今日にかけて、7and1/2%(7.5%)で『出した』500本(5億ドル)は既に『含み損』(『評価損』)の状態になるわけだ。
[$500,000,000- × (1/2 − 9/16) % = △
$312,500 ]
マーク・トゥ・マーケット(Mark to Market)で引き直せば、312,500ドルの『含み損』ということだ。 計算してみると、けっこうな金額だ。
『出し始めた』昨日はちょっとした緊張感が有ったのだが、ハーフを500本『出し』終わってからはもう珍しくもない。
エイドリアンとアン・リーに、
「アップ・トゥ・ファイブ・ハンドレッド・アト・ナイン。」
(Up to 500 at 9.)
9/16は、500本までだよ、と頼んでしまった。
エイドリアンとアン・リーが、元気良く、
「オーケー!」
(O.K!)
と答えた。
彼女たちは、普段は、アシスタントの仕事ばかりで、実際のディーリング業務をなかなかやらせてもらえないものだから、こういった場合に任せると張り切ってやってくれる。
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