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もう、ディーリングどころではない。
要は、飲みすぎだ・・・・・。
みんな調子に乗りすぎている・・・・・。
うーん・・・・・。 まあ、いいかぁ・・・・・。 たまには・・・・・。
その時に、顧客のダイレクト・ラインが光った。
人数がそろっていないので、いつもは金利の仕事をしている高山が、あわててダイレクト・ラインのボタンを押した。
「ドル・マルク・ハンドレッド!」
ディーリング・ボードに残っている少ないメンバーに緊張が走った。
ドル・マルク100本(1億ドル)のクォート(建値)を顧客が訊いて来たのだ。
俺達のディーリング・スタイルでは、ドル・マルクはそれほど積極的に取引している通貨ではない。
ドル・マルクを担当しているディーラーも一人だけで、経験が短いし、サポートする人数もそれほどいない。
いや、ドル・マルクの担当と言うのもおこがましい。
ドル・円のデスクと、その他の通貨のデスクとの二つに分けているだけだ。
ドル・円以外のクォート(建値)は全部、そいつが一人でやっているのだ。
なかなかプライスが出ない。 いや、出せないのだ。
「おい、佐々木。 負けてもいいから、適当に出しちゃえよ。」
「いや、ちょっと待ってください!
今、ロンドンにつないで、プライスを聞いているんですが、出ないんです。
適当って言っても、今の気配値がわからないんです・・・・・。
ドル・マルクは、まだ荒れてるんです!」
高山が、いらいらした声で言った。
「出ないのぉ? お客さん、待ってるよ!」
佐々木が、しぶしぶとクォート(建値)した。
「チョード、ゴマル。(00−50)」
それを聞いて、高山もしぶしぶと復唱した。
「チョード、ゴマル。(00−50)」
みんな、沈黙している。
プライスが悪すぎるのだ。
ドル・マルク100本(1億ドル)のクォート(建値)なら、10ポイントから20ポイント程度のスプレッド(開き)が普通だ。
ビッドがチョード(00)なら、『チョード、イチマル(00−10)』か『チョード、ニマル(00−20)』といったクォート(建値)になるし、オファーがゴマル(50)ならば、『ヨンマル、ゴマル(40−50)』か『サンマル、ゴマル(30−50)』といったクォート(建値)になる。
顧客からクォート(建値)を要求された際に、『出ない』、『出せない』のなら、すぐにそう答えたほうが顧客のためになる。
待たされている間もマーケットは動いているわけだし、『出ません』という明確な返事をもらっていれば、他の銀行に電話をして、プライスを訊くことができる。
もちろん、信頼は失う。
もう二度とクォート(建値)を要求してこないかもしれない。
それでも、顧客が不利益を被らないように、最大限の努力をしている。
むしろ、経験のある顧客は、わかってくれる。
状況によってクォート(建値)できないほど、負けてしまったり、パニックになってしまうことが、誰にだってある。
そんな時には、『他の銀行でプライスを訊いて下さい』と素直に言ったほうが、好感が持てる。
待たされた挙句に、全然、問題にもならないようなプライスを提示されたら、顧客も余計に腹が立つだろう。
もっと、信頼を失うことになる。
高山がしぶしぶと、また言った。
「ナッシング!」
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