ドル円ユーロ投資入門
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外国為替の基本と
カラクリがよ〜くわかる本

外国為替の基本とカラクリがよ〜くわかる本


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フォレックス・ディーラー物語
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Forex Dealer Stories
「小早川」 No.8

 もう、ディーリングどころではない。

 要は、飲みすぎだ・・・・・。

 みんな調子に乗りすぎている・・・・・。

 うーん・・・・・。 まあ、いいかぁ・・・・・。 たまには・・・・・。


 その時に、顧客のダイレクト・ラインが光った。

 人数がそろっていないので、いつもは金利の仕事をしている高山が、あわててダイレクト・ラインのボタンを押した。

 「ドル・マルク・ハンドレッド!」

 ディーリング・ボードに残っている少ないメンバーに緊張が走った。

 ドル・マルク100本(1億ドル)のクォート(建値)を顧客が訊いて来たのだ。

 俺達のディーリング・スタイルでは、ドル・マルクはそれほど積極的に取引している通貨ではない。

 ドル・マルクを担当しているディーラーも一人だけで、経験が短いし、サポートする人数もそれほどいない。

 いや、ドル・マルクの担当と言うのもおこがましい。

 ドル・円のデスクと、その他の通貨のデスクとの二つに分けているだけだ。

 ドル・円以外のクォート(建値)は全部、そいつが一人でやっているのだ。

 なかなかプライスが出ない。 いや、出せないのだ。



 「おい、佐々木。 負けてもいいから、適当に出しちゃえよ。」

 「いや、ちょっと待ってください!
 今、ロンドンにつないで、プライスを聞いているんですが、出ないんです。
 適当って言っても、今の気配値がわからないんです・・・・・。
 ドル・マルクは、まだ荒れてるんです!」

 高山が、いらいらした声で言った。

 「出ないのぉ? お客さん、待ってるよ!」

 佐々木が、しぶしぶとクォート(建値)した。

 「チョード、ゴマル。(00−50)」

 それを聞いて、高山もしぶしぶと復唱した。

 「チョード、ゴマル。(00−50)」



 みんな、沈黙している。

 プライスが悪すぎるのだ。



 ドル・マルク100本(1億ドル)のクォート(建値)なら、10ポイントから20ポイント程度のスプレッド(開き)が普通だ。

 ビッドチョード(00)なら、『チョード、イチマル(00−10)』か『チョード、ニマル(00−20)』といったクォート(建値)になるし、オファーがゴマル(50)ならば、『ヨンマル、ゴマル(40−50)』か『サンマル、ゴマル(30−50)』といったクォート(建値)になる。


 顧客からクォート(建値)を要求された際に、『出ない』、『出せない』のなら、すぐにそう答えたほうが顧客のためになる。

 待たされている間もマーケットは動いているわけだし、『出ません』という明確な返事をもらっていれば、他の銀行に電話をして、プライスを訊くことができる。

 もちろん、信頼は失う。

 もう二度とクォート(建値)を要求してこないかもしれない。

 それでも、顧客が不利益を被らないように、最大限の努力をしている。

 むしろ、経験のある顧客は、わかってくれる。

 状況によってクォート(建値)できないほど、負けてしまったり、パニックになってしまうことが、誰にだってある。

 そんな時には、『他の銀行でプライスを訊いて下さい』と素直に言ったほうが、好感が持てる。

 待たされた挙句に、全然、問題にもならないようなプライスを提示されたら、顧客も余計に腹が立つだろう。
 もっと、信頼を失うことになる。


 高山がしぶしぶと、また言った。

 「ナッシング!



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