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フォレックス・ディーラー物語
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Forex Dealer Stories
「小早川」 No.11

 頭の包帯がとれたころ、小早川が俺のところにやって来た。

 神妙な顔をしている。

 「梅田さん・・・・・。 ちょっと、ご相談があるのですが・・・・・。」

 「どうした? 真面目な顔して・・・・・?
 何だ・・・・・?」

 「いやぁ・・・・・。 ここでは、ちょっと・・・・・。」

 「しゃべりにくい話かぁ?
 いいよ。 じゃあ、応接室にでも行くかぁ・・・・・?」

 「はい。 今、だいじょうぶですか?」

 「ああ。 相場もたいしたことないし、だいじょうぶだろう。
 ウシ、ちょっと、頼むぞ。」

 俺のアシスタントをしている牛山が返事をした。

 「はい。 応接室ですね。
 何かあれば、すぐに呼びに行きますから。」

 「じゃあ、行こうか?」

 「はい。 お願いします。」



 ドアを開けて、応接室に入った。

 本店は古い建物だ。 前近代的な造りで、応接室の窓は小さい。

 だから、なんとなく薄暗い。 入り口のすぐ横にある電気を点けた。

 壁には、立派な油絵が飾ってある。

 一番奥に大きな机と椅子がある。 その大きな机の上には、電話とガラスの入れ物に入った置時計があって、置時計の回転式の振り子が右、左と動いている。

 その大きな机の前にあるソファーに向き合って座った。

 普段はそんなに使っていない部屋だから、空気がひんやりとしている。


 「どうした、小早川? 何かあったのか?」

 「いえ・・・・・。 そうでは、ないんですけど・・・・・。」


 「・・・・・。」

 「・・・・・。」


 「何だよ。 おまえが話さなくちゃ、進まないじゃないか。」

 「はい・・・・・。 その通りなんですけど・・・・・。」

 「言いにくい、話なのか?」

 「はい。 思い切って、お話します。
 僕、銀行を辞めようかと思うんですけど・・・・・。」

 「あぁ? ・・・・・?」

 「いやっ、この会社を辞めようか、どうしようか、迷っているんです・・・・・。」

 「・・・・・?」


 今度は、俺が戸惑った。

 【何で、俺に、相談しに来たんだ?
 そういったことの相談だったら、バック・オフィスに直接の上司もいるだろうし・・・・・。

 直接の上司に話しにくいのなら、人事部に相談するべきじゃないか・・・・・?】


 「いやぁ・・・・・。 小早川・・・・・。

 そういった事は、俺に相談するんじゃなくて・・・・・。
 佐藤か、人事部に相談したほうがいいんじゃないかぁ・・・・・?

 佐藤は俺の同期だから、おまえが切り出しにくいんだったら、俺が口利いてやろうか?」

 「いや、それはわかっているんです。
 突然、梅田さんに相談するのは、筋違いなのは・・・・・。

 すみません。

 でも、まだ、入社して日も浅いですから、知っている人も少ないですし、誰に相談すればいいのか、良くわからなかったことも事実です。」

 「だから、それは、佐藤か人事部だよ。」



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