「そっか・・・・・。
泊り込みの研修期間もあったしな。
確か、今年の新人研修は長かったよなぁ?
2ヶ月だったっけ?」
「はい。」
「俺たちの頃は、2、3週間だったんだけどなぁ・・・・・。」
「研修の間も、『腹筋』とか、『腕立て伏せ』とかを、やってはいたんですが、その程度では、やはりダメです。
今は、もっと科学的なメニューで筋力トレーニングをやっていますから・・・・・。
オリンピックの強化選手に専念している奴と比べると、明らかに、見劣りします・・・・・。
自分はこの半年間、充分な練習をやっていないのですから、体力が落ちています。
相手は専門的なトレーニングをやって鍛えてきたうえに、技量も上がっています。
追いつかないんです・・・・・。」
「そっか・・・・・。」
「この間、以前なら、負けたことのない奴に、負けました。
理屈で考えれば、当たり前だとはわかるんですけど、悔しいんです。」
「うん。 わかるよ。
筋力なんて、2、3ヶ月で簡単に落ちるからなぁ。
元に戻すのには、それ以上の時間がかかる。」
「はい。 その通りです。
オリンピックを諦めて、このまま、この会社に残るという選択もあるんですが・・・・・。」
「会社辞めたら、オリンピックの強化選手になれるのかよ?
いや、オリンピックに行けるのかよ?」
「いえ、オリンピックに出られるかどうかは、もちろん、選考がありますから、なんとも言えません。
ただ、このままだと、オリンピックは諦めるしかありません・・・・・。
実は、京都のメーカーなんですけれど、ボート部があって、琵琶湖で練習ができるんです。そこに来ないかと話があったんです。
そこならば、強化選手に選ばれれば、練習に専念できるんです・・・・・。
・・・・・。
梅田さんならどうしますか?」
「オリンピックに出たいんだろう? それが夢だったんじゃないのか?」
「はい、そうです。」
「じゃあ、決まってんじゃないか。」
「・・・・・。」
「その京都のメーカーに行けよ。」
「・・・・・。」
「俺に相談するってことは、『俺だったら、そう答える』って思ったからだろう?」
「・・・・・。」
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