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フォレックス・ディーラー物語 |
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Forex Dealer Stories |
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帰りは、田辺課長がタクシーでルーズベルト・ホテルまで送ってくれた。
「おい、梅田。
今度は一人でだいじょうぶだな?
フロントで自分の名前を言えば、キーをくれると思うけど・・・・・。」
「はい。
何とかなると思います。」
朦朧(モウロウ)としながらタクシーを降りた。
翌朝7時にホテルのベッドで起きたことを考えると、どうやら一人で鍵をもらって部屋に着いたらしい・・・・・。
支度をして、すぐに会社に向かった。
昨日はリムジンで行ったが、単純な一本道で、距離もたいしたことはなかったはずだ。
外に出て見ると、朝が早いせいか人通りも車も少ない。
『ちょっと肌寒いなぁ。』
そう感じながらも15分程度歩くと、昨日見た茶色のビルの大きなショー・ウィンドウに着いた。
『これだ。これだ。』
エレベーターの24階で降りた。ディーリング・ルームはこの階だった。
細長い廊下を通って、突き当たりの右にある、濃い茶色の扉のノブを回した。
『あれ? 鍵が掛かっているぞ。』
中には、人の気配がするのだが、英語に自信がないので声をかけにくい。
『25階の受け付けからだったらオフィスに入れるだろう。』
エレベーターに戻ることにした。
戻りかけると、廊下の途中に階段の絵が描いてあって、扉がある。
『これは非常階段だな。
24階から25階に行くだけだから、エレベーターが来るのを待つのは面倒だ。
この階段で25階まで行こう。』
廊下の壁の色に合わせて、クリーム色にペイントした重い鉄の扉を開けて、階段を24階から25階へ登った。
非常階段の壁面も同じように明るいクリーム色だ。非常用なのだろうが、高層ビルの内部に作られた立派な階段だ。
25階には、24階と同じ重い鉄の扉があった。そのドアのノブを回した。
『あれ?
回らない。
鍵が掛かっているぞ・・・・・。』
今度は25階から24階へ戻って、ドアのノブを回してみた。
『やっぱり回らない。鍵が掛かっている・・・・・。
俺はこのドアから、こっち側に入った・・・・・。
廊下から非常階段には行けるけれど、逆には行けないんだ・・・・・。』
どうやら閉じ込められたようだ。
だけれども、まだ、それ程焦ってはいなかった。
『じゃあ、23階から1階まで一つずつドアを調べながら降りて行こう。どこか開いているドアがあるかもしれない。』
23階、22階、21階とドア・ノブを回しながら降りて行った。どれも鍵が掛かっている。15階か16階あたりまで調べてちょっと不安になった。
『これは、全部、鍵が掛かっていそうだ・・・・・。
でも、1階では出られるだろう・・・・・。』
クリーム色の壁はまだまだ下に続いている。
階段の踊り場の壁に上の階と下の階を示す数字が掲げてある。
14階から13階に降りるとき、踊り場に食パンが落ちていた。
『なんでこんなところに食パンが落ちているんだろう?
今は拾わないぞ・・・・・。
けれども、万が一、何日も閉じ込められたままの状態になるかもしれない・・・・・。
13階と14階の間だということは覚えておこう・・・・・。』
時間をみると、8時10分前だ。
田辺課長が8時頃に出社するように言っていたことを思い出した。
『少し急ごう。 着任早々で遅刻はいやだしな。
それに、どうやら非常階段の内側は、全部鍵が掛かっているのだろう。』
俺は10階のあたりからドア・ノブを調べないで1階まで降りた。
ここで慌てた。
1階のドアにだけ、警報機が付いている。
ドアの右上部に真っ赤にペイントされた鉄のボックスが備え付けてあるのだ。
『誰が見たって、これは警報機だ。
このドアを開けたら消防車が来ちゃう。
着任早々で消防車を呼んじゃたら、まずいよぉ・・・・・。』 |
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その赤い鉄のボックスから、30〜40センチほどのプラスティックの白いプレートがドア側に飛び出している。
その白いプレートに英語が書いてあるのだが、英語というだけで自信がない。
それに、どう考えてもこの扉を開けたら、この警報機が大きな音を立てるに決まっている。
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