仕方がないので、鍵が掛かっているかどうか調べなかった2階から10階のドアを回してみることにした。
時計を見ると8時を少し過ぎている。
『参ったなぁ・・・・・。
田辺課長に申し訳ない・・・・・。』
2階から10階も全部鍵が掛かっていた。
2階から10階まで登るのは、結構きついことに気が付いた。
うっすらと汗が出てくる。
11階から25階までは、ドア・ノブを回してみて、鍵が掛かっているのはわかってはいる。しかし、26階から上は、まだ調べていない。
『しょうがない・・・・・。
11階から25階まではだめだった。
でも、念のためもう一度、鍵が掛かっていないドアがないか、回しながら25階まで登ってみよう。
それから、26階よりも上の扉を調べてみよう・・・・・。』
13階と14階の踊り場に食パンが落ちていることを確認して、さらに上へと登って行った。
17階か18階あたりまで来たときには、ハアハアと息が切れていた。汗も運動をした後のように出ている。
11階から25階まではやっぱり鍵が掛かっていた。
25階に着いたときに少し休むことにした。
いい運動だ。 最近は運動不足だったから俺の健康には本当に良いだろう。
そう言えば、高校や大学のとき、登山部やワンダーフォーゲル・クラブの奴等が大きなリュックを背負って学校の階段の昇り降りの練習をしていた。
25階から1階まで降りて、また1階から25階まで登ってきたのだけれど、なにも持っていなくてもこんなにきつい。彼らのあの練習は大変だったんだ。
時計を見ると、9時少し前だ。
『参ったなぁ・・・・・。
田辺課長は俺が着任早々遅刻したと思ってるだろうなぁ・・・・・。
だらしがない奴だと思ってるかなぁ・・・・・。』
気を取り直して、26階から上の扉を調べることにした。
一休みしてからだと足が重い。明らかに登るスピードが遅くなっている。
それに1階から25階まで念入りに調べて全部鍵が掛かっていたのだ。
26階から上の階で鍵が掛かっていない扉がある可能性の方が低い。
それでも、ここから出る方法が他に思い付かない。
着任早々、消防車を呼ぶことだけはいやだった。後でなにを言われるかわからない・・・・・。
改めて26階から登り出すと、汗が噴き出るようになった。
ワイシャツが汗で体にぴたっとくっ付いてくる。
ズボンも太ももにへばりつくようだ。
『うっ・・・・・。
気持ちワリー・・・・・。』
37階まで調べたときに階段越しに上を見た。
『まだまだ上があるよぉ・・・・・。
何階まであるのかなぁ・・・・・。
まだ、半分くらいだろうか・・・・・。』
実はこのビルは47階建てなのだが、この時はまだ着任翌日で何階建てなのか知らなかった。この時は60階建てか70階建てのように思えた・・・・・。
まだまだ上があると思ったときに、気持ちが萎えた。
汗でびちょびちょで、息はハアハア。
上気して頬が熱い。
頭はクラクラする。
『どうしよう・・・・・。』
時間を見ると、もうすぐ9時45分だ。
『もう階段を登りたくない。』
階段を降りることにした。
もう、ゆっくりしか歩けない。
『歩く度に膝がカクカクする。
膝が笑う状態とはまさにこういうことだなぁ・・・・・。』
24階のクリーム色の鉄の扉の前に着いた。
念のためもう一度37階から24階までの全部のドア・ノブを回してみたのだが、残念なことにどのドア・ノブも回転しなかった。
24階の扉の前で、思った。
『俺はこの扉からこっちに来たんだよなぁ・・・・・。』
1階まで降りても、あの警報機がある。
あの警報機を鳴らして外に出るのは最後の手段だ。
俺は、自分の入ってきた24階の鉄の扉を、握り拳で音が出るように、叩いた。
「ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン・・・・・」
「ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン・・・・・」
鉄の扉を叩く音が響く。
非常階段の作りは、ある意味でコンクリート製の筒のようなものだ。
反響してハウリングを起こしている。
『しょうがないなぁ・・・・・。』
と思いながら、ぼんやりと扉を叩き続けた。
15分か20分くらい叩いていたのではないだろうか・・・・・。
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