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ドル円ユーロ投資入門
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ドル円ユーロ投資入門
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外国為替の基本と
カラクリがよ〜くわかる本
外国為替の基本とカラクリがよ〜くわかる本
 ファースト・ディール
 The First Deal  No.9

 「ねえ、青山君。
 売ればいいのかなぁ?
 買えばいいのかなぁ?」

 「『買い』じゃないですか?
 みんな『ドル・ブル』ですよ。」

 「『ドル・ブル』?」

 「ドルが強い、ドル高円安になるって思う人が『ドル・ブル』。
 ドルは弱い、ドル安円高と考える人は『ドル・ベア』。
 『ブリッシュ』、『ベアリッシュ』っていう言い方もありますけどね。」

 「ふーん・・・。
 じゃあ、ドルを買えばいいのか・・・。
 ドルを買う場合は『買った』って言えばいいの?」

 「そうですよ。
 英語でかっこよく言うなら『マイン( “Mine” )』ですね。」

 「ドルを売るときは?」

 「素直に『売った』って言えばいいんですよ。
 英語なら『ユアーズ( “Yours” )』。」

 「そうか・・・。
 じゃあ、やってみようか・・・。
 この電話のボタンを押せば、ブローカーさんが出てくるわけね?」

 「はい。」

 「すぐに、出てくれるかな?」

 「そりゃすぐに出てくれますよ。商売ですから。」

 「そう・・・。
 いや・・・、あんまり早くっても、何て言えばいいのか・・・。
 買うんだったら、『買った』って言えばいいんだよね・・・。」

 「ブローカーさんはベテランですから、大丈夫ですよ。むこうは慣れてますから。
 電話に出ると、すぐプライスを言ってくれますから、それに対して、『買った』って言えばいいんですよ。」

 「うん。」

 「ブローカーさんは、電話にでると、まずプライスを言います。
 別の用事だったら、その後でも、話はできるでしょ?
 この電話は、為替相場をやっているわけですから、まずプライスを伝えるわけです。」

 「ふーん・・・。」

 「それから、ブローカーさんが電話に出るとき、『もしもし』と言わないで、『もし!』って言いますからね。」

 「・・・??」

 「『もしもし』って二回言わないで、『もし』が一回だけなんです。
 時間を節約するための慣行だそうです。」

 「へー・・・。
 そうなんだ・・・。
 うん、じゃあ、やってみようか。」

 「受話器はこれを使って下さい。」
 そう言って、青山君が、ディーリング・ボードの左右に2個ついている受話器のうち、右側の受話器をくれた。
 受話器の握るところにスイッチが付いている。

 「このスイッチは何?」

 「そのスイッチをクリックすると、向うの声は聞こえるんですけど、こちらの声が向うに行かなくなります。
 両手で、両方の受話器を持って、いっぺんに二人の相手と同時に話すときに、スイッチを入れたり、切ったりして、それぞれと話すんです。」

 「へー・・・!」
 感心してしまう。いろんな機能が付いてるんだ。

 「それから、お客さんと話をしている最中に、急に相場が動くときもありますよね。そんなときに、クリックすれば、ディーラー同士で、『何があったの?!』とか『プライス!』とか、大声で訊けるじゃないですか。
 クリックすれば、こちらの声はお客さんに聞こえないわけですから。」

 「なるほどね・・・。
 じゃあ、この受話器を借りるよ。
 どのボタンを押せばいいの?」

 「一番左の一番上の一列が『スポット』のラインです。
 どれを押してもいいんですけど・・・。」

 「じゃあ、この一番左のボタンにするよ。」

 「はい。それは『トウフォレ』ですね。」

 「『トウフォレ』?」

 「『東京フォレックス』というブローカーさんの会社名です。」

 「あっそう・・・。」

 青山くんのデスクについている受話器を左手に持って、『TFS』と書いてあるボタンを押した。


トウフォレ・スポット・ライン
ニッタン・スポット・ライン
ウエダ・スポット・ライン
ヤマネ・スポット・ライン
ハトリ・スポット・ライン
コバヤシ・スポット・ライン
マーシャル・スポット・ライン
トウフォレ・フォワード・ライン
ニッタン・フォワード・ライン
ウエダ・フォワード・ライン
ヤマネ・フォワード・ライン
ハトリ・フォワード・ライン
コバヤシ・フォワード・ライン
マーシャル・フォワード・ライン
トウフォレ・デポ・ライン
ニッタン・デポ・ライン
ウエダ・デポ・ライン
ヤマネ・デポ・ライン
ハトリ・デポ・ライン
コバヤシ・デポ・ライン
マーシャル・デポ・ライン
内線・外線ライン
内線・外線ライン
内線・外線ライン
内線・外線ライン
内線・外線ライン
内線・外線ライン
内線・外線ライン

転送
Clear
ディーリング・ボード


 すぐに元気のいい声がした。

 「もし! ニーゴー・サンゴー!」

 本当に、『もし!』って出てくる。

 青山君の言っていたのは、これのことだな、と思いながら、緊張した声で、

 「イッポン、買った!」
 と言った。

 「はい!
 サンゴー、1本 ダンです!
 ありがとうございます。
ロイター・モニター
 オンコー(御行)、買いました、ユー・エス・ドル1本、241円サンゴーです。」
 ものすごく早口だ。

 「・・・・・・。
 はい。ありがとうございます・・・。
 あの、・・・。」

 言いかけたら、切れてしまった。

 「あれっ、切れちゃった。」

 青山君が答えた。
 「ああ、いいですよ。
 ボクがあとで、コンファームしておきますから。」

 そう言いながら、青山君が、電話を切るボタン(クリア・ボタン)を押してくれた。
 ここの電話は普通の電話機のように、受話器を置くところがない。

 普通の電話機は、受話器を置くところに戻すと自動的に電話が切れるのだが、受話器を戻すべきところがないから、電話を切るためのボタンを押さないと電話を切れないのだ。

 受話器は机の上に二個ずつころがっている。


 「『コンファーム』?」

 「ええ。取引の確認のことです。
 外国為替取引は金額が大きいですから、何回も取引の確認をするんです。
 1本違ったって、2億4000万円ですからねぇ。」

 「梅田さんの買ったレートはいくらですか?」

 「・・・・・・。
 あれっ?
 いくらだっけ?」

 「いや・・・・・・。
 コンファームすれば、すぐにわかりますから大丈夫ですけど・・・。
 ボクが電話に出てたんじゃないですから・・・・・・。
 梅田さんの聞いたプライスはいくらだったんですか?」

 「そういえば・・・、ニーゴー・サンゴーって言ってた。」

 「じゃあ、サンゴーですよ。
 梅田さんは、『1本買った』って言ってましたから。
 えっと、じゃあ、241円35銭で、1本買いました、梅田さんのポジション、っと」

 青山君が、机の上の紙に書いている。

 「梅田さん、この伝票に記入してください。」

 そう言って、青い複写の伝票をくれた。

 「ここに、金額と、レート、どこのブローカー経由でやったのかを書いてください。」

 「オッケー。」

 「おっ、英語ですね。
 だいぶ慣れてきたんじゃないですか?」

 「いや・・・。そんなことはないけどぉ・・・。」


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 とりあえず、ドルを1本買ってみた。

 さしたる理由があったわけではない。

 青山君に聞いてみたら、みんながドル買いだって言っていると答えたからだ。

 多い方が勝つんじゃないかな?

 だって、多数決なんじゃないの・・・?

 相場って?



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