東京銀行が241円ゴマルを買い上げてから、ドルは底堅い動きになった。ゴマルは何回かギブンするのだが、ゴマルにはいつの間にか『買い』が入ってくる。
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その動きを見てか、ドルはロクマル、ナナマルと上昇した。
俺は、もっと上がれ、もっと上がれと、口には出さないけれど、心の中で応援していた。 |
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『ハチマル』が抜けると、もっと上に行くんじゃないかと期待していた。
さっき、平井さんが言っていた『チャート・ポイント』という言葉を思い出していた。『ハチマル』は、このレートを突き破ると、跳ね上がっちゃうポイントだって言っていた。
ナナマルが『買い』になって、青山君が叫ぶレートが「ナナマル‐ハチマル」になった。
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「ハチマル・テイクン!」
「ハチマル・テイクン! なお売り!」
俺は、ドキドキしながら、ハチマルを抜けて、ドルが跳ね上がることばかり考えていた。
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平井さんが、『止まるとしたら、ニマルとかハチマルが壁になることが多い』と言ってくれたことは、すっかり忘れている。
ハチマルは何回か出合ったのだが、ハチマルをピークにドルが下がりだした。
ハチマルで売れば良かった・・・。
そういった思いがよぎった。
だけど、ハチマルで売るには、何て言えばいいんだろう?
ハチマルが『買い』になっていてれば、『売った』と言えばいいのはわかる。
しかし、今回、ハチマルは『買い』になっていない。
青山君の言っていたレートは、一番高いときでナナゴーの『買い』だった。
「ロクゴー・ギブン! ロクゴー・売り!」
あれっ・・・。
もう、ロクゴーまで落ちてる。
「梅田さん!
落ちてきましたよ!
ドルは落ちるときの方が速いんです!
利食った方がいいかも知れませんよ!」
「そうか!」
「ロクマル・ギブン!」
本当だ! 落ちるときの方が速い。
俺はあわてて、青山君の右の受話器を持って、一番左上の『TFS』のボタンを押した。
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「もし! ゴーゴー・ロクゴー!」
「イッポン売った!」
「イッポン・ダン! 241円ゴーゴーです!」
青山君に伝えた。
「ゴーゴー、1本売ったよ。」
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「はい。『利食い』ですね。良かったですねぇ。
20ポイントですから、20万円の利益ですよ。」
「えっ、そんなに儲かったの?」
「はい。
だって、1本1ポイントで、1万円ですから・・・。」
20万円だと、俺の一ヶ月の手取り額くらいになる。
たったこれだけで20万円か・・・・・。
[(241.55−241.35)× 1,000,000 = +200,000 ]
「ロクゴー・テイクン!」
俺がゴーゴーを売ったときは、すぐにもゴマルを切れて落ちて行きそうに思えたのだが、ゴマルを売る銀行は無かった。
ロクゴー・ナナゴーで『後場(ゴバ)』の取引が終わった。
始めてやった取引で、20万円の利益だから満足だった。
きっと、平井さんも褒めてくれるだろう。
「梅田君、今日はどうだった?」
「はい! 20万円の利益です!」
「あっそぅ。」
「・・・・・・。」
あれっ・・・。
褒めて貰えないんだ・・・。
これじゃ、利益が少ないのかな・・・。
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