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 ファースト・ディール
 The First Deal  No.18

 また、『仲値』が決まると、取引は急に静かになった。

 ディーリング・ルーム全体の雰囲気も緊張感が和らいでくる。


 「『仲値』が決まると、ちょっと一息なんだよ。
 別な言い方をすれば、朝の『寄付き』から『仲値』までがひと勝負、ってことになるかな。
 だいたい、このくらいの時間から、11時半頃までは静かなんだ。
 11時半頃からは『前場』の締めで、インターバンク・ディーラーが『持ち高』調整をするから、また『出会い』が多くなるんだ。
 今のうちに、ちょっと、席を外すからな。」

 そう言って、平井さんが立ち上がった。

 「お金を下ろしてくる。すぐ戻るから。」

 「はい。」
 青山君が答えた。


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 これで、昨日と同じ20万円の利益だ。

 20万円では、平井さんに褒めてもらえなかった。

 もう少し勝てばいいのかなぁ・・・?


 そんなことを考えていたら、後ろから、怒鳴り声があった。

 「ドル円5本!」

 俺はびっくりして、中腰に立ち上がって声のあった方向を振り向いた。

 俺の顔を見つめている。



 えっ、?!

 俺に聞いてるの?!

 あれっ?!



 そう思って、今度は、左にいる青山君の顔を見た。


 すると、青山君は、座ったまま俺の目をじっと、見つめ返しながら、右手を揚げて人差し指だけは、プライスを求めたカスタマー・ディーラーを指差した。

 そして、
 「ニーゴー・サンゴー!」
 と大きな声で怒鳴り返した。


ロイター・モニター
 すぐにまた、後ろから、さっきの怒鳴り声がした。
 「サンゴー!」

 また、後ろを振り向いて、その人を見ると、もうこっちを見ていない。
 左の耳に受話器を当てて、ディーリング・ボードに向かっている。
 誰かと話しているようだ。

 最後に、
 「はい。『ダン』です。」
 と言って、電話を切った。

 それから、こっちを向いて、俺の顔をまた見た。

 「じゃあ、サンゴーで5本ドル買ったよ。石油会社。」

 どうも、俺に言っているらしい。


 さっき、青山君が『ニーゴー・サンゴー』と答えたのだから、確かに『スポット・セクション』は、『カスタマー・セクション』に、サンゴーで5本売っていることになる。


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 カスタマー・ディーラーは『ドル円5本!』と言っただけなのが、それだけでドル円5本(五百万ドル)の値段(プライス)を聞いていることになる。


 青山君は『25‐35』と答えた。

 これは、『スポット・ディーラーが、242円25銭でドルを5本買う、もしくは、242円35銭でドルを5本売る』と建値した意味だ。

 このように、『買値(ビッド)』と『売値(オファー)』の両方を、いっぺんに同時に建値するやり方を『ツー・ウェイ・プライス・クォーテーション(Two Way Price Quotation)』という。


 ドルを、売るのか、買うのかは、プライスを尋ねた方が決めることだ。

 プライスを訊いた人が、ドルを買いたいのなら、「マイン(Mine)」と言えばい良い。

 あるいは、この場合、カスタマー・ディーラーが『サンゴー』と言ったように、スポット・ディーラーが建値をしたオファー・レート(Offer Rate)を言えば、ドルを買ったことになる。

 当然、建値をしたスポット・ディーラーは、ドルを売ることになる。

 逆に、プライスを訊いた人が、ドルを売りたいのなら、「ユアーズ(Yours)」と言う。

 レート(数字)で、ドル売りの意思表示をするのなら、プライス・クォーテーションビッド・レート(Bid Rate)を言えば良い。

 このケースならば、『ニーゴー』と言えば、プライスを尋ねた人のドル売りになる。

 建値をしたスポット・ディーラーは、ドルを買うことになる。


 プライスを尋ねたのだが、『売り』も、『買い』もしないで、そのプライスをパスする時は、「ナッシング(Nothing)」と答える。



 スポット・ディーラーが、『25−35』と『ツー・ウェイ・クォーテーション』をして、カスタマー・ディーラーは『35』と言ったのだから、『スポット・ディーラーは、242円35銭でドルを5本売った』ことになる。

 スポット・ディーラーがドルを売るということは、カスタマー・ディーラー(最終的には、顧客)がドルを買うわけだ。


 『1本』は『百万ドル』のことだ。

 だから、『5本』は『五百万ドル』になる。


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 とりあえず、早く答えなくちゃ、そう思って、
 「はい!ダンです!」
 とあわてて返事をした。

 青山君に、質問をしようと思って、左を向くと、青山君の方が先に俺に訊いた。

 「梅田さん、どうしますか?」


 えっ!!

 俺が訊きたいんだけど・・・?!


 「『カバー』を取るのなら、すぐ取っちゃいますけど・・・?」

 俺は、きょとんとして
 「『カバー』?」
 と訊き返した。



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第7話 ファースト・ディール
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