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フォレックス・ディーラー物語 |
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Forex Dealer Stories |
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ファースト・ディール |
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The First Deal |
No.20 |
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「どーだった?
だいじょうぶか?」
そう言いながら、平井さんが戻ってきた。
「キャッシュ・ディスペンサーが混んでてねぇ。
なかなかお金おろせなかったんだよ。」
「はい。
石油会社のTTSが、5本、ありました。
そのまま、『カバー・ディール』しました。」 |
「あっそーぉ。
いくらで?」
「サンゴーです。」
「んん。
で、現状は?」
「ヨンマル・ゴーマルです。」
平井さんが俺を見ながら、
「梅田君はどうだったの?
今のポジションは?」
と訊いた。 |
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「はい。今は持ってません。『スクウェアー』です。」
「あっそう。」
ポジションがないときは、『スクウェアー』という。
平井さんが戻って来て、俺はホッとした。
平井さんがいてくれれば、俺がプライスを訊かれないですむ。
プライス・クォート(建値)って、結構、難しい。
いや、難しいというより、常にプライスを聞いていて、その時の、瞬間瞬間のプライスがいくらなのか、常にわかっていなければクォートできない。
そのためには、ずっと緊張を続けていなければ無理だ。
ちょっとでも、気を抜くことができない。
顧客からのプライスの要求は、いつ来るのかわからない。いきなり、「ドル円、何本!」と飛んで来る。
プライスを訊かれてから、クォートを考えたり、マーケットが、いくらなのかブローカーさんに電話をかけて確認している時間はない。
お客さんが、プライスを待っているぞ、と言わんばかりのカスタマー・ディーラーたちの、鋭いにらみつけるような目線が光っている。
早く出さなくてはいけない。
突然にプライスを訊かれるのは、まさに、飛んで来るといった感じだ。
「ドル円、何本!」と飛んで来るカスタマー・ディーラーの要求に、平井さんは淡々とクォートしている。
平井さんは緊張がずっと持続しているのだろうか?
疲れないのだろうか?
平井さんが戻ってからは、また静かなマーケットだった。
時折、突然にプライス・クォーテーションの要求が飛んで来て、―――あれ以来、俺はビクッとするのだが、―――平井さんは難なくさばいている。
昨日の午前中までは、そんなことに気が付かなかった。
ディーリング・ルームに配属されてから、何日間か毎日見てきたことなのだが・・・・。
平井さんは、瞬時にプライスをクォートしている。
それはすごいことだったんだ・・・。
自分で、ポジションを取ってみて、初めて、それが簡単なことではないことだとわかる。
それに、平井さんの建値は、マーケット・レートをそのまま言っているのではない。
マーケット・レートが、「ヨンマル・ゴマル」の時に、「サンゴー・ヨンゴー」とか、「ヨンゴー・ゴーゴー」とプライスをずらして答えている。
俺は、『今、プライスを訊かれたら、いくらと答えれば良いのだろう』と、常に考えながら、青山君の復唱するレートを聞いているのだが、そうすると、俺がクォートするとしたら、いつもマーケット・レートとそのまま同じになってしまう。
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