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 ファースト・ディール
 The First Deal  No.21

 「青山、終わったか?」

 12時15分くらいになって、平井さんが、そう声をかけた。


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 『前場』は12時ちょうどで、いったん外国為替市場が閉まる。

 だから、『カスタマー・デスク』のディーラーたちは、12時になると、すぐに昼食を取りに席を立つ。12時10分ころから、急に社員食堂がものすごく混んで、並ぶことになるからだ。

 昼時はどこも一緒だから、12時ちょうどに急いで食堂に向かえば、まだ混んでいない。そのわずか数分の違いが大きい。

 だが、『スポット・デスク』は、『前場』が引けても、すぐに出られない。
 外為市場がクローズした後で、『前場』に行った取引の確認(コンファーム)をブローカーさんと済ませてからでないと、席を立てないのだ。

 『スポット』のブローカーさんは、この当時、『トウフォレ』、『ニッタン』、『ウエダ』、『ヤマネ』、『ハトリ』、『コバヤシ』、『マーシャル』と7社ある。

 弱いブローカーさんだと、日によっては取引が無いこともあるのだが、無いなら無いで、取引が無かったことを電話で確認しなければならない。

 取引があった場合は、その取引が、『売り』なのか『買い』なのか、「相手方の銀行名(カウンター・パーティ)」、「アマウント(金額)」、「取引レート」、「資金の受取口座(ペイメント、Payment)」を確認する。

 『売り』、『買い』、『銀行名(カウンター・パーティ)』『アマウント』『レート』は一覧表(ディーリング・シート)に記入してあるから、赤鉛筆でチェックしていけばすぐに終わる。

 しかし、『ペイメント』は、一覧表(ディーリング・シート)には書かないで、それぞれの伝票に書き込まなければならない。だから時間がかかる。

 取引の多かった日はなおさらだ。


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 「はい。コンファーム終わりました。
 大丈夫です。」

 そう言って、青山君が立ち上がった。

 青山君は大男だ。190センチくらいあるのかな?

 普段、座って話しているときは、そんなに気にならないことなのだが、立ち上がると見上げるほどだ。

 俺は背が低い方なので、立って並ぶと青山君のアゴあたりまでしかない。


 「よし、じゃあ行こうか。」

 平井さんが、立ち上がって、俺と青山君の後ろを通って、先に廊下に出た。
 青山君と俺も、平井さんの後に付いて行った。

 社員食堂が、一番混んでいる時間帯だ。

 食堂に入ろうとしたら、先発した『カスタマー・ディーラー』たちとすれちがった。
 もう食べ終えて、食堂を出るところのようだ。

 「お先に!」

 そう言って、ぞろぞろとカフェテリアのある方へ向かって行った。みんなでコーヒーでも飲むつもりなのだろう。

 急いでいけば、まだ、カフェテリアのテーブルが空いている時間だ。カフェテリアが混むのは、12時半を過ぎた頃からだから。


 今日のメニューはカレーだ。昔ながらの田舎風の黄色いカレーだ。大きなジャガイモがほくほくしている。

 俺と青山君は、食堂のおばちゃんに言って「大盛り」にしてもらった。

 「普通盛り」のカレーは、お子様ランチのチキン・ライスのように、「型」で形を整えた「ご飯」だ。「ご飯」の片側にだけ、カレー・ルーが、かかっている。

 社員食堂なので、「大盛り」も「普通盛り」も、同じお皿を使う。
 だから、「大盛り」を頼むと、食堂のおばちゃんは「ご飯」を「型」に入れないで、そのままお皿に盛る。お皿の片側に山盛りにした「ご飯」の横に、たっぷりとカレーのルーをよそってくれる。

 デザートにグレープ・フルーツが付いている。半分に切ったグレープ・フルーツの入ったボウルをトレイに載せた。

 混雑している社員食堂のテーブルの中で、四人掛けのテーブルが空いていた。カレーとグレープ・フルーツを載せたトレイを、三人で、そこに置いた。

 トレイを置いてから、
 「お茶持ってきますね。」
 そう言って、青山君が、平井さんと俺にお茶を運んでくれた。


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時計と帽子
第7話 ファースト・ディール
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