「そうなんですか?」
「そうなんですよぉー。
みんなの言う通りにやって、それで上手くいくんだったら、それに越したことはないんですけどねぇ・・・。
だったら、みんな勝っちゃうでしょ?
負ける奴はいないことになっちゃう。
ところが・・・、
『そうは問屋は卸さない〜♪』。」
俺は内村さんの話を聞きながら、ふんふんと思いながら、心の中で、
『いよっ、ベベンベン!』と、
『合の手』を入れていた。
「『後場』ですけどね・・・。
『前場』の引けがヨンマル・ゴーマルでしたから、そのままヨンマル・ゴマルで始まるでしょうね。
『前場』はゴマルより上を買って行かなかったですけど、『後場』になれば、その上を買っていくことになるでしょうねぇ。
まだ、『ショート』が残ってると思いますよぉ。」
「『ショート』が残ってる?」
「はい。
『ショート・ポジションを持っているディーラーが残っている』という意味です。
まだ、ドルの『売り持ち』のままで、ドルが下がったら買おうと思って待っているディーラーが、たくさんいそうだ、ってことです。」
「なるほど・・・。」
「こういう時って、下がらないんですよ、ドルは。
だから、誰かか『買い』で仕掛けるんじゃないですか?」
「このまま、ドルが上がって行っちゃうということですよね?」
「はい・・・。
でも、まあ、当たるとは限らないですからね。『眉毛に唾つけて』聞いてくださいよぉ。」
「はい。」
「『前場』で、一回、チョード(242.00)まで売り込んでいるじゃないですか。
242円台ですからねぇ。
この水準だと、『値ごろ感』から売りたくなるんですよ。
『ドルが落ちる時は速い』のを、ディーラーだったら誰でも知ってますからね。
絶対『売り持ち』で捕まってる人がいますね・・・、今日は。」
「でも、みんな『ドル・ブル』だって、朝から言ってたみたいですよ?」
「いやいや、いろんな考えの人がいますから・・・。
100パーセント、みんなが『ドル・ブル』になったり、100パーセント『ドル・ベア』になったりは、しないんですよ。
どんな時にも、反対の考え方をする人がいるんです。
相場って、そういうもんなんですよ。
『売る人』がいないと、『買えない』じゃないですか?」
「うーん・・・。
そう言われると、そうですねぇ・・・。」
「かといって、昨日より1円以上ドル高になっていますから、『買い』で仕掛けるのも勇気がいるんですよ。
じゃあ、どこまで上がるのかって、誰だって考えますからねぇ。
『後場』になったら、目をつぶって、ドルを買ってみて、売り逃げちゃうのが賢いんじゃないですかねぇ・・・。
それくらいしか、思いつかないですねぇ、今のところ・・・。」
「そうですか。わかりました。ありがとうございます。
じゃあ、『後場』もよろしくお願いしますね。」
「いやいや、ウメちゃん、こちらこそお願いしますよぉー。
頑張りますからねー。」
内村さんと話しているうちに、『後場』が始まる時間に近づいてしまった。
今日は、外国為替の本を読んでいる時間はなさそうだ。
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