「だって、考えてみろよ。
ハチマルを抜けて上に行くのがわかってるんだったら、ハチマルを買って、その上で売れば利益になるわけだろう?
逆に、ハチマルを抜けないで、下がるのがわかってるなら、ハチマルを売って、その下を買い戻せば勝てる、ってことだろう?
ハチマルを抜けるのか抜けないのか、事前にわかっていれば、いくらでも儲けられる。
だから、本当に誰にもわからないんだよ。
それで、『抜けるのか抜けないのか』の『博打(ばくち)』をしてるのさ。
わからないから、みんな売ってみたり、買ってみたりしているんだな。
わからないから、何もしないで、見てるだけの奴も多いんだ。
そういう奴は、怖くて手が出ないのさ。
梅田君は、わからないなりにやってるじゃないか。
それでいいんだよ。」
「・・・・。」
「マーケットを知らない人は、我々が何かしらの情報に基づいて、売ったり買ったりしているんだ、と思ってるのさ。
『経済』だとか、『分析』だとか、やってるんだろうと、勝手に想像している。
もちろんそういったこともやるし、大事だけど、マーケットの動きを見て、上がりそうだとか、下がりそうだとか、そういった感覚の方が当たるね。」
「・・・・・。」
「頭で考えると、その考えに縛られて、身動きが取れなくなっちゃうんだ。
切れなくなっちゃうんだよ。」
「・・・・・。」
「失敗して『損』が出たら、切らなくちゃならないだろ?
理論で考えて、こうなるはずだ、とか思ってると、これは『相場が間違っているんじゃないか?』って判断するんだな。
そうすると、切らない。
切らないとますます『損失』が大きくなるのさ。
『株』とか、『為替』とかで、何百億円もの大きな損が出て、ニュースになるじゃないか?
だいたい、そういった『損失』も最初はそんなに大きくはないんだよ。
理論や理屈で考えて切らない。
『損』が出ているってことは、すでにその考え方が誤っているんだ、とは認めないんだな、そういう状況になると。
切れないでいるうちに、『相場』がますます『アゲインスト』に振れちゃって、『損』が大きく膨らむんだよ。
そうなると、今度は『損した金額』が大きすぎて切れない。
追い込まれて、堂々巡りになっちゃうんだな・・・・。」
「・・・・・。」
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